最新の一次救命処置について|胸骨圧迫を中心に解説

一次救命処置は反応、呼吸のない心肺停止の疑いのある傷病者を助けるために行う一連の処置をさします。

日本ではJRC蘇生ガイドラインと呼ばれる指針に従ってこの一次救命処置が作成され、5年ごとに最新の研究結果を反映したものに更新されています。

2017年現在、救命の現場はJRC蘇生ガイドライン2015に従っていています。今回、更新・修正が加わった一次救命処置のポイントを整理すると下記の通り、胸骨圧迫(心臓マッサージ)がより重視されました。

  • 全ての心停止傷病者へ質の高い胸骨圧迫が行われることを目指す
  • 救助者の熟練度に合わせた心肺蘇生の推奨
  • 『迷ったら胸骨圧迫から開始する』ことを強調

この記事ではそうした、一次救命処置の最新の内容を胸骨圧迫(心臓マッサージ)を中心に解説していきます。
この記事で胸骨圧迫の重要性についてお伝えできれば幸いです。

一次救命処置とは

救急蘇生法の全体図

救急蘇生法の全体図

現在、日本の救命指針とされているJRC蘇生ガイドライン2015では上記のように一次救命処置を位置付けています。

一次救命処置は心臓や呼吸の止まった、傷病者を助けるために、救急隊到着まで行う一連の処置です。その内容は下記の3つから構成され、傷病者の年齢、救助者の熟練度、使える資材や人員で実施する内容が変わります。

  • 心肺蘇生法(CPR) 胸骨圧迫や人工呼吸・気道確保について
  • AEDの使用 AEDを用いた心肺蘇生法(CPR)の手順や注意点について
  • 気道異物除去 窒息への対応法について

ファーストエイドとは救急隊や医師に診てもらう前に、傷病者の苦痛を和らげ、悪化を防ぐためにとる一次的な処置です。蜂に刺された時から、すり傷、やけどなどがここに該当し、以前は応急手当の名称でしたが今回からファーストエイドという名称に変わりました。

そして、この2つ、一次救命処置とファーストエイドを合わせて救急蘇生法といいます。

蘇生ガイドライン2015の一次救命の特徴

一次救命処置ガイドライン2015の特徴

一次救命処置ガイドライン2015の特徴

新しい一次救命処置は全ての心停止傷病者へ質の高い胸骨圧迫が行われることを目指し作成されています。

救急隊到着まで、何もされなかった傷病者の数を減らすために、『迷ったら胸骨圧迫から開始する』ことを強調し、また、救助者の熟練度に合わせた手順を推奨しています。

例えば、一次救命についてトレーニングを積んでいるのであれば人工呼吸から始め、胸骨圧迫を開始し、近くにAEDがあれば電気ショックを行うことが推奨されます。

訓練を受けていない場合や救助者が1人しかいない場合などは、救急隊や応援が来るまで胸を押し続けることが推奨されています。

心肺蘇生法の流れ

ここからは、傷病者を発見し、質の高い胸骨圧迫(心臓マッサージ)とAEDを用いた現場での電気ショックを実施するまでの流れを解説していきます。

①傷病者の発見と反応を確認

反応の確認

反応の確認

人が倒れるところを目撃したり、倒れている人を発見したら、声をかける前にまずは周囲の安全を確認してくだい。

もし、車の往来や落下物の危険、異臭、煙が立ち込めている、といった場合は救助者の安全が何よりも優先されますので、何かしらの危険を感じる場合は近寄らず110番や119番に通報し現状を伝えます。

安全が確認できた後、救助者の反応の確認に移ります。倒れている人の方を軽く叩きながら、耳元で大声で呼びかけます。

「もしもし、大丈夫ですか?」

この時、目を開ける、手で払うなどの応答が確認できたときは『反応あり』と判断します。

反応がない、もしくはけいれんしているような動きで、呼びかけに応答していない場合は『反応なし』と判断します。

また、判断に自信が持てない時も『反応なし』と判断し、心停止を疑った傷病者の対応を行います。

ただし、 肩を揺するなどは控え、なるべく頭部を動かさないように注意し、首がねじれるなど頚椎の損傷がおきないように注意 します。

②119番通報とAEDを要請する

119番通報をしAEDを要請する

119番通報をしAEDの手配をする

発見者が1人の場合、「人が倒れています!!だれか来てください!」など、大声で救助の応援を周囲に呼びかけます。

その後、駆けつけた協力者に119通報してもらい、近くにAEDがある場合はその手配を依頼します。この時、「あなた、119番お願いします!!」「あなた、AEDを持ってきたください」と具体的に伝えます。

もし、誰も来ないといった場合、直ちに119番通報をし、現状を正確に伝えます。

救助者が一人の場合は119番の通信指令員から指導を受けながら、胸骨圧迫ができるように、携帯電話をスピーカー通話やハンズフリー通話に切り替え、両手をあけてから、呼吸の確認に移れると迅速な対応ができます。

 

119番通報時の指令員からの質問例

近年は119番の指令員が心停止の判断や心配蘇生の方法を口頭で教えてくれます。
判断や手順に自信がない場合は冷静に、指令員に状況を伝え指示を仰ぎます。

  • はい、消防119番です。火事ですか?救急車ですか?
  • 場所はどこですか?
  • 救急車の必要な人のお名前と年齢など教えて下さい。
  • どうされましたか?どんな様子ですか?
  • 胸骨圧迫はできますか?等
  • 病歴やかかりつけの病院を教えて下さい。
  • 最後にあなたのお名前と電話番号をお願いします。
  • 救急車はもう出動しています。救急車が近づいたら案内をお願いします。

 

③呼吸を確認をする

呼吸の確認

呼吸の確認

心肺停止になると、『普段通りの』呼吸がなくなります。倒れた人の呼吸が普段通りのものか観察するために、顔を近づけ、胸の動きに注目します。

この時、胸が上下に動くことが確認できなければ、呼吸がないと判断し、ただちに胸骨圧迫(心臓マッサージ)から心肺蘇生を始めます。

また、「いびき」「しゃくりあげる」のような途切れ途切れの呼吸(死線期呼吸、下顎呼吸といいます)、普段通りではない呼吸が見られたら、この場合も呼吸なしと判断します。

呼吸の確認は10秒ほどで行うことが推奨されていて、10秒以上かけてわからなかった場合や判断に迷う場合も同様に普段通りの呼吸はないと判断し、直ちに、胸骨圧迫(心臓マッサージ)を始めます。

この時、反応はないが、普段通りの呼吸がある場合、呼吸の観察を行いながら、救急隊の到着や応援を待ちます。もし、救急隊到着の間に容態が急変し、普段通りの呼吸がなくなった場合には、すぐに胸骨圧迫(心臓マッサージ)を行います。

 

普段通りではない呼吸について参考になる動画
新潟県柏崎市のYoutube公式チャンネルに投稿された動画です。
消防のレスキュー隊が死線期呼吸を演じている大変参考になる動画です。
動画のようなあえぐような動きをします。

 

救命の練習人形などを開発しているレールダルメディカルジャパンのYoutube公式チャンネルです。死線期呼吸の解説についてをまとめた動画です。

 

オーストラリアボンダイビーチで実際に起きた水難事故からの救命動画です。現地のライフセーバーによるAEDを用いた心配蘇生の動画です。動画では救助者の口元が動いている様子がよくわかります。

 

④胸骨圧迫(心臓マッサージ)を実施する

胸骨圧迫|胸を押す

胸骨圧迫|胸を押す

普段通りの呼吸がない場合、または判断がわからない場合はただちに胸骨圧迫(心臓マッサージ)を行います。

胸を押すことの効果・意味は、ポンプ機能の失われた心臓に変わって肺に残った酸素を特に脳などの重要な臓器に送り続けることです。

胸骨の圧迫は中断頻度が少なく、中断時間が短いほど効果が高まります。

そして、新しいガイドラインで特に強調されている、 胸骨圧迫のポイントは「強く、早く、絶え間なく」です。 具体的な手順は以下の流れです。

 

胸骨圧迫を始めるまえに

傷病者が固い平らな場所に倒れているか確認します。柔らかいマットの上だった場合、胸骨圧迫の効果が弱まるため、119番の通信指令員へ状況を説明し、指示を仰ぎます。

また、うつ伏せになっている場合は首がねじれないように注意しながら、仰向けにして、体が一直線になるようにします。

 

 胸骨圧迫の場所
胸骨圧迫の場所

胸骨圧迫の場所

押す場所は以下の部分。両乳頭の間、体の中心部分です。

みぞおち部分ではなく、胸骨とよばれる縦長の骨の下半分を垂直に圧迫します。

 

 胸骨圧迫の方法
胸骨圧迫の実施

胸骨圧迫の実施

まず、救助者は傷病者の脇の位置につきます。

そして、胸骨圧迫の方法は手を重ね、手のひら全体ではなく、手のひらの付け根、手掌基部だけに力が加わるようにします。

重ねた手を少し反らせると理想的です。そして、両肘を伸ばし、圧迫部位の真上に肩がくるよう。垂直に体重がのるようにして圧迫します。

 

 胸骨圧迫の深さとリズム

傷病者が成人の場合、約5cm沈み込むように強くしっかりと圧迫を繰り返します。この強さが足りないと胸骨圧迫の十分な効果が得られないためしっかりと圧迫することが重要です。

小児では成人と比べ、体が柔らかいので、体の厚み3分の1沈み込むように圧迫します。両手での圧迫では強すぎる場合、片手での圧迫に切り替えます。

このときのリズムは1分間に100から120回です。胸骨圧迫の中断時間を減らせるよう、絶え間なく行います。

このリズムについてはアメリカ心臓財団が公開している上記の動画が参考になると思います。

 

 胸骨圧迫の解除

胸骨圧迫は深さも重要ですが、圧迫の解除に注意します。

胸を押した後、圧迫と圧迫の間に胸を元の位置に戻すことが大切です。

この圧迫の解除を行わないと、血液の循環が生まれず、胸骨圧迫の効果が減ってしまいます。

また、傷病者の胸に置いた手は動かないようにし、圧迫部位が動かないように注意します。

 

 胸救助者の交代

質の高い胸骨圧迫を続けることは非常に体力を使います。

疲れて必要な深さ、リズムを維持することが難しくなる場合もあり、応援がいる場合、無理せず1〜2分間隔で交代することが推奨されています。

 

 人工呼吸との組み合わせ

救助者の熟練度が高く、人工呼吸の技術を身につけていて、なおかつ人工呼吸を行う意思がある場合、胸骨圧迫とあわせて、人工呼吸を行います。

30回胸を押し、2回の吹き込みを行い、これを繰り返します。もし、人工呼吸に自信がない場合は胸骨圧迫を続け、中断時間を減らすことが重要となります。

 

AED到着から使用まで

AEDによる電気ショック

AEDによる電気ショック

AEDは傷病者の心電図を解析し、必要な時には電気ショックを実施するだけでなく、音声ガイダンスとランプで心肺蘇生で実施すべきことを指示してくれます。

AEDを用いた心肺蘇生ができると、傷病者の生存率を高めることが期待できます。ですが、準備をしている間も、胸骨圧迫の中断が起きないようにすることが推奨されています。

具体的なAEDの使用についてはこちらの解説ページをご覧ください。ここでは簡単な流れだけの解説します。

 

  • AEDを要請する・持ってくる
  • 電源を入れる
  • 電極パッドを傷病者の胸に貼り付ける
  • 心電図を解析
  • 電気ショックと胸骨圧迫(出来れば人工呼吸)の再開
  • 約2分ごとに心肺蘇生とAED使用を繰り返す

 

人工呼吸について

のどに物を詰まらせての窒息や溺れた場合などでは人工呼吸と合わせた心配蘇生が強く望まれます。

突然倒れた場合は、まだ体内に酸素が残っているため、訓練されていない市民が人工呼吸を行うより、胸を押し続けることが効果的です。

ですが、窒息、溺水の場合は時間をかけて心停止に至るため、体内に酸素が残っていないことがほとんどと言われています。そのため、人工呼吸により酸素を体内に届けることが非常に有効です。

ガイドライン2015では訓練を受けていない、自信がない、または傷病者の口に直接さわることにためらいがある場合は胸骨圧迫だけを続けることを推奨しています。

もし、人工呼吸を実施することが想定される場合は消防や日本赤十字社の講習を受けることをおすすめします。

 

 気道確保
気道確保

気道確保

写真のように傷病者の顎先と額を持ち、のどの奥を広げ、空気の通り道を確保することを気道確保といいます。上のような気道確保を頭部後屈(とうぶこうくつ)あご先挙上法(きょじょうほう)といいます。

 

 呼吸の吹き込み
人工呼吸

人工呼吸

人工呼吸を行う場合は気道確保した状態で鼻をつまみ、胸が上がるのが見えるまで、約1秒かけて吹き込みを行い、胸が下がるのを見てから、2回目の吹き込みを1回目と同様に行います。

人工呼吸の感染防護具が手元にあれば使用が推奨されていますが、血液を触らない限り、感染の危険性は低いと言われています。

 

人工呼吸の注意点

人工呼吸を効果的に実施することは非常に難しく、訓練が必要とされます。

訓練を十分受けていない救助者が人工呼吸を行うと、気道確保が十分でなく、吹き込んだ空気が届いていない。もしくは、気道ではなく、食道に吹き込みをしてしまい、胃の内容物を逆流させてしまうといったようなことが懸念されます。

こうした状況は結果として、胸骨圧迫の中断時間の増加につながり、救命率を下げてしまいます。

このような事態を防ぎ、救命効果を高めるため、訓練されていない救助者の場合は効果を得やすい胸骨圧迫を継続することが現在推奨されています。

まとめ

ここまでご覧いただきありがとうございました。

2016年に公表された日本の一次救命について解説してきました。新しい救命は以前と比べ、シンプルに実施しやすいものになっています。

これを機に、地域の消防による救命講習や日本赤十字社で実施している応急手当講習で、新しくなった救命を体験して欲しいと思います。

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